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ユキのもとに幸福を! プロローグ

「……ああぁぁ、学校行きたくねえ」

 そこかしこで桜が咲き乱れ――るこのない綺麗に舗装された道を歩きながら俺、四木凪シュン(しきなぎしゅん)は頭を抱えていた。

「入学初日から何言ってるの?」

 いやまあ、おっしゃる通りなわけだが。入学式の日と言えば、期待と不安が入り混じるとかよく言うけれど、正直今の俺には不安と不安と不安と一握りの希望的観測くらいしか存在しないから仕方がないのだ。
 朝の比較的静かな住宅街。道路は灰色のアスファルトがみっちりと敷かれ、見渡す限り家、家、家。アパート、マンション、一戸建て、木造、鉄筋と種類は様々だけれど、空き地すら存在せずに建物がひしめき合っている。緑といえば家庭のお庭に申し訳程度に置いてある植木鉢とか生垣ぐらいのもので、こういうところは地元の方がいいのかな、なんて思ってしまう。
 俺の実家は地方の片田舎にある。まあ、コンビニもあるし自転車で行ける距離に複合商業施設もあるのでド田舎というほど田舎でもないのだが、「いいところは?」なんて聞かれたら「なんもねえよ」と答えるのがテンプレなので田舎と言って差し支えはないだろう。都会と比べれば緑豊かなのだが、実際住んでいるとそういう「いいところ」というものは分からないもんだよなぁ。慣れとかそういう系のやつだ。

「なあに、もうホームシック?」

「そんなんじゃねえよ」

 ただ単に、案外田舎も悪いことだけじゃなかったんだなと再認識しただけの話だ。バスは少ないし、夏や秋の夜は虫がうるさくて眠れないし、街灯も少ないせいで夜は出歩きたくないけれど、四季を存分に感じられたりといいところも多少はあった。それに気付いたのは引っ越してきてしばらく経ってからだったわけだが。

「ま、これから少なくとも三年はここで過ごすんだから慣れていかないとね、田舎者君!」

「…………」

 お前も田舎者だろうが、という視線を投げるが、相手はどこ吹く風と鼻歌なんぞ奏でている。まあ、こいつの言うとおり、高校進学で田舎から出てきた俺は少なくとも三年、ひょっとしたらそれ以上をここで過ごすことになるだろう。やっぱり慣れないとだめだよな、電車の乗り方とかさ。

「ていうかユキ、お前あんまり外で話しかけんなよ」

「えーなんでー?」

 お前、それ絶対わかってて言ってるよな。にやけ顔隠せてないし。ほら、今だって通りすがりのサラリーマンがこっちの方を三度見くらいして首をかしげていたじゃないか。愛想笑いする俺の身にもなってほしい。まあ、こいつにはなにを言っても仕方がないので、ため息をついて歩くペースを少し速める。後ろから彼女、ユキがトテテとついてくる気配を感じながら、受験のために一度だけ訪れた学び舎を思い出していた。
 私立巡坂(めぐりざか)高等学校。創立からまだ十年程度の新設校で、真新しい校舎が眩しかったのを覚えている。うちの中学校の校舎、手入れはしっかりしていたから結構綺麗だったとはいえ木造だったからな。実際に見た時は感動したものだ。
 私立らしく校内の敷地は広く、部活も結構充実しているらしい。確か、去年は野球部とテニス部がそこそこの好成績を出していたはずだ。学力だけでなく部活動の成績にも力を入れているようで、在校生の四割が推薦で入学している。
 俺? 俺は余裕の一般入試組だ。中学の頃は帰宅部だったし、特段運動が得意なわけでもない。勉強はそこそこできるけれど、あの入試問題を見る限り、高校じゃ真ん中くらいの成績だろうな。そもそもうちの学校の卒業生は十中八九、地元の公立高校に進学するか、家の手伝いを選択するから外部の高校から認識されていないんじゃなかろうか。担任も外部への受験方法を聞いたときにだいぶ慌てていたから、ひょっとしたら俺が都会の高校受験は初めてだったのかもしれない。
 まあ詰まる所、全く知り合いのいない場所に身を置くことになったわけで、新天地での生活に期待以上の不安があったりもするのだ。

「大丈夫? ちゃんと友達作れる?」

「お前は俺の母さんかよ……」

 心配そうにコテッと小首をかしげて……いや、それ本当に心配していません?

「だって……中学校までシュンってばぼっちだったじゃん」

「あのなあ……」

 だいたいそれは、と続けようとして、息をついて言葉を切る。今更こいつに言っても仕方のないことだし、そもそもそれを選んだのだって俺自身だ。自分自身が決めた選択なのだから、それは受け止めなくてならない。後悔はしても、責任転嫁なんてもってのほかだ。
 まあ、別に後悔しているわけではないけどな。
 ユキが言ったように、俺はぼっちだった。小学校の頃から友達はおらず、話しかけようとすれば逃げられる。嫌われていたと言うよりも怖がられていたと言う方が正しいかもしれない。別に不良をやっていたわけじゃないし、俺も基本的に普通の子供だったんだけどな。

「まあ、なるようになるだろ」

 いや、田舎者だからって理由でハブられる可能性はなきにしもあらずだけれど……やばい、急に不安になってきた……。

「大丈夫大丈夫。きっとなんとかなると思うよ!」

 がっくりと肩を落とした俺をユキが慰めてくる。なんだお前いい奴だな。いや待て、そもそも不安になったのはこいつのせいじゃないか。なんて酷いマッチポンプなんだ。

「お前のせいで高校初日から気が重くなったんだけど……」

「私のせいじゃないもーん」

「こいつ……ん?」

 一つゲンコツでもかましてやろうかと思って振り向く途中、脇道の奥にいる人影が目に入った。いや、ただの人影だったら特に気にしなかったのだが、道の真ん中でしゃがんでいたせいでやけに目立ったのだ。

「シューンー」

 ユキも気がついたようで、くいくいと袖を引いてきた。何を言いたいかは分かるのだが、それちょっときついんだけれど……。

「そんな逃げてるようじゃ、いつまで経っても友達できないぞ?」

「うぐ……」

 それを言われると何も言えなくなっちゃうんだけれど……。まあ、そうだよなぁ。逃げていたら高校をこっちにした意味もないもんな。よし、がんばれ俺。負けるな俺!

「……負けそう」

 いやいやいやいや! 諦めるの早すぎだろ。頭を軽く振って、もう一度意気込むと、今度こそ人影に足を向けた。
 距離が近くなるにつれて人影の詳細な姿が認識できるようになる。だぼっとした長袖Tシャツにジーンズというラフな格好。毛先にかけて緩やかなウェーブを描いている黒髪は、腰のあたりまで垂れ下がっていて、女性であることが察せられた。
 大丈夫だ、落ちつけ。いくら田舎出身者だからって会話くらいはできる。ここはさらっと声をかけて、困っているようなら手助けをするべきだろう。……よし!

「あの……ど、どうしたんですか……?」

「ぇ……?」

 初手でどもったんですが……。つら、死にそう、もうマヂ無理、引きこもろう。いや、引きこもっちゃだめだわ。幸いなことに相手にも引かれていなかったことだし、良しとしておこう。次気をつければいいからな。
 振りかえった彼女を見て、女性と称するのは間違いだと悟った。俺の声に反応して上げた顔は存外幼く、少女と言った方が正しかった。
 というか、美少女だった。超がつくほどの美少女だった。
 そんな彼女に声をかける男、俺――

「ねえねえ、これってまずい奴なんじゃない?」

 ユキの言葉につっと冷汗が流れる。制服姿で朝っぱらからナンパしていると思われるとあれだし、最近のご時世はよく分からないもので、近くを通り過ぎただけで通報されることもあるらしいとネットで見た。いや、俺は何もしていないしするつもりもないのだけれど、ここでこの少女に叫ばれたりしたら、あらぬ疑いをかけられてしまうかもしれない。やばい、話しかけなければよかった。やっぱ都会って怖すぎやしませんかねぇ。
 しかし、俺を見上げた彼女はキョトンと首を傾げ、何か納得がいったのか再び地面に視線を落とした。どうやら通報されることはなさそうでホッとする。

「眼鏡を……落としてしまって……」

「……あぁ」

 ぼそりと呟いた彼女はそろりそろりと地面に手を這わせている。さっき俺を見上げた時も微妙に焦点が合っていなかった気がするし、どうやら相当目が悪いようだ。ここは一緒に探してあげた方がよさそうだと思い近くにしゃがみこんだ。まあ、側溝もない道だから、すぐ近くに落ちているだろう。彼女の頭に乗っかっているとかいうギャグなわけでもないしな。

「シュン、あれ……」

「ああ、見つけたのか」

 だから、一緒に探しだしたユキがすぐに見つけたようで、ふいっと顔を上げて――

「……あれ、か……?」

 なんか変な顔が出かけた。道の脇、電柱の陰。そこに落ちていたのは紛れもなく眼鏡だった。しかし、最近の眼鏡というものはデザインも多種多様で、シンプルなものからオシャレなものまであるはずだ。しかし、これは……。

「こんな眼鏡……本当に存在したんだね」

 牛乳瓶の蓋のような円形のレンズ。視力補正としての効果があるのかも怪しいほぼ分厚いそれは、飾りっ気のない細い黒フレームにはまっていた。いわゆるのび太君眼鏡である。それを手に取った俺は、つい未だにしゃがみこんでいる少女と見比べてしまう。
 え、だってこれ……ダサくないか? 俺の感性がおかしいの? 田舎者だからか? 都会ではこれがトレンドなの? いや落ちつけ、まだこれが彼女の眼鏡だと決まったわけではない。
 と、とりあえず聞いてみよう。

「ひょっとして……これで、すか……?」

「ぁ……」

 どもりながらも丸眼鏡を差し出すと、恐る恐るそれを受け取って――かけた。
 や、やっぱりダサい……! 整った顔立ちが眼鏡一つで完全崩壊してしまっている。分厚いレンズに阻まれて、クリッとした瞳はほとんど見えない。というか、それ本当に見えてます?
 一度眼鏡を外して、歪んだ部分がないか確認した彼女はもう一度かけ直し――ダサい――ぺこりと頭を垂れた。

「どうも、ありがとうございます」

「い、いえ……お構いなく」

 顔を上げると、分厚いレンズ越しに俺を見て、チラッと周囲を見渡して、少女は踵を返した。ゆっくりと歩いていく彼女の後姿はつい見惚れてしまうほど綺麗で、けど正面に回るとあの眼鏡かけているんだよなぁと思うと、軽い詐欺にあった気分だった。
 本当に、都会って怖い。不安がより大きくなってしまったが、気を取り直して俺は学校に向かうのだった。


     ***


「初めて来たけど、ほんとに綺麗な学校だねぇ」

 校内をキョロキョロ眺めながら、ユキが楽しそうにはしゃいでいる。どうでもいいけれど、あんまり目の前でピョンピョン飛び跳ねるのはやめてほしい。薄いブルーのワンピースが揺れて、思春期の男にとって目に毒だから。慣れてはいるけれど、やっぱり猛毒。
 だいぶ早めに着いた俺達はのんびりと校内散策をしていた。探検って言うと子供っぽいけれど、散策って言うとちょっと大人びて感じるよな。こんなこと考えている時点でユキからは子供っぽいと言われかねないんだが。

「シュン! あっち行ってみようよ!」

「……はいはい」

 まあ、当の本人が今一番子供っぽいんだけどね。
 校内は受験の時にある程度見たので、今回はグラウンドの方に足を運ぶ。きちんと整備されたグラウンドはサッカー部、ラグビー部、陸上部などの練習場所のようで、それぞれの部活が同時に練習できるようになっているようだ。うちの中学だと日ごとにグラウンドの割り振りが決まっていて、各部活がよく喧嘩していたな。まあ、そもそもそんなに人数がいなかったから、よくと言っても喧嘩をしていたのは一番部員の多いサッカー部と野球部だったけれど。グラウンドの奥には屋外野球場があり、俺達の後ろにある体育館の隣には屋内プール、その裏手にテニスコートもあった。俺からしたら最早テーマパークである。私立高校の片鱗を味わってしまった。
 散策をしている間にいい時間になって来たようで、俺と同じ新入生であろう人影が増えてきた。真新しい制服に身を包んで、親であろう人と話していたりする。

「親なぁ……」

 まあ、うちの親は仕事もあるし、そもそもここから実家まで新幹線を使ってもかなり時間がかかる。他と違うということが少し寂しくも感じたが、仕方のないことだろう。
 それに――そんなことはもう今更だしな。
 時計に目をやると、入学式の始まる十五分前。いつの間にか会場である体育館の入口が開け広げられていて、受付の上級生が入場を促していた。別にすることもないし、俺もさっさと入っておくかな。

「ユキ、そろそろ中に入るぞ」

「え? あ、分かったー」

 さっきからそこかしこを見てはわーきゃー騒いでいるユキに声をかけて、受付を済ませると体育館の中に入った。やはり清潔感のある屋内は広く、吹き抜けの二階部分も結構広そうだ。一階にはパイプ椅子が大量に並べられていて、前半分が新入生、後ろ半分が保護者席らしい。受付で新入生の席は決まっていると言われたので、教えてもらった席に座る。両脇には教師と思われる人たちが整列していて、元からの緊張と相まって、新入生達もほとんどしゃべらない。ガチガチに固まって背筋を不自然なまでに伸ばして座る奴や、キョロキョロとしきりに周りの様子を窺う奴、手のひらに“人”を書いては食べるを繰り返している奴もいて――いや待て、別に壇上に出ることはないのに“人”を食べるってどれだけ緊張しているんだ。
 まあ、周りがこれだけ緊張しています感を出していると逆に冷静になるもので、椅子に深く腰掛けてぼーっと周りを眺めて時間を潰した。ああ、あの先生入試の時に試験官だった人だなとか考えていると、スピーカーから小さなハウリング音が聞こえてきて、一瞬シン、と体育館内が無音になった。

『これより、巡坂高等学校、入学式を始めます』

 若い女性教師の進行で入学式が進められる。まあ、小学校の卒業式じゃあるまいし、ぶっちゃけ新入生のやることなんて、指示に従って立ったり礼をしたり拍手をしたりする程度だ。なんとなしに校長先生の話とかを聞き流していれば、どんどん式の日程は進んでいく。それにしても、どうして校長の話はどこの学校でもさして面白くない上に長いのだろうか。普段校長室に籠っていて話し相手がいないのかもしれないが、龍鳴館の学園長みたいに二、三言でサクッと終わらせてほしい。

『続きまして、生徒会からの挨拶です』

 生徒会、生徒会か。小説の世界では派手なことをやる校内グループの代表格だが、現実では中間管理職と言った方が正しいだろう。そんな面倒臭い役を引き受けるなんて俺には無理だなと考えていると、数人の生徒が壇上に上がる。どうやら彼らが生徒会役員のよう――

「新入生の皆さん、入学おめでとう。僕は生徒会長の――」

 生徒の一人が話し始めたが、俺の耳はその声を右から左に受け流してしまい、認識することはなかった。なぜなら俺の思考は大混戦の大混乱状態になっているからだ。
 今の俺を第三者的視点で見ていれば、人の話をちゃんと聞けとツッコミたくなるかもしれない。しかし、ちょっと待ってほしい。そもそも校長の話なんかも、さしてよく聞いていなかったのだから今更であるし、混乱した頭で耳から入ってきた情報を正確に認識しろということ自体が無理難題と言えよう。
 だって、だって……俺の目には今――


 でかい丸眼鏡が映っているのだから!


 なんと! 壇上に立つ役員の一人が今朝見たばかりの丸眼鏡をかけているのだ。一度目なら「まあ、そういう人も世の中にはいるよな」程度で済む話なのだが、二度目ともなると自分の感性が間違っているのではないかと不安になってくる。ひょっとして都会では丸眼鏡が流行り始めているのだろうか。ごめん、俺には良さが分からない。都会の感性についていけなくて辛い……。

「いや、あれって今朝会った人じゃない?」

「え? ……ああ、そう言えば」

 ユキ言われて改めて観察してみると、二つに分けて後ろに下げた三つ編みおさげの髪は腰あたりまである黒で、正面から見たその顔も確かに見覚えがある。ほぼ間違いなく、今朝遭遇した彼女で間違いないだろう。先輩だったんだな。っていうか、おさげ三つ編みとかいう比較的地味な髪型も相まって、余計に眼鏡がダサく見えるんだけれど……。馬鹿なっ、ダサレベルの上昇が青天井だと!? なんだよダサレベルって。ネーミングからしてダサい。

「……つうか、話しかけるなって言っただろ」

 声を潜めてユキに釘を刺すと、不服そうに口を尖らせてきた。
 いや、マジであんまり話しかけないでくれよ。つい返事返しちゃったせいで、隣の名も知らない男子からなんだこいつみたいな目で見られたんだから。初対面の相手に変人認定されるのは心にクるのでNG。


『それでは、新入生の皆さんは退場してください』

 そのアナウンスを皮切りに周囲が俄かにざわめきだす。各々が席を立ち、知り合いと話したりしながら会場を後にする。俺もパイプ椅子から腰を上げると、やはり緊張のせいで強張っていたのか、身体がミシミシと悲鳴を上げた。

「シュンがおじいさんみたいなことしてるー」

 腰に手を当ててぐぐっと伸びをする俺を見て、ユキが指差しながらケタケタ笑いだす。別にこれくらいのことはおじいちゃんではないだろ。いや確かにじいちゃんがよくこんな伸びしているけれど……。ムッとしながら視線を投げるが、なおも笑いながら背中を叩いてきた。笑うのも叩くのもやめていただきたい。別に痛くもかゆくもないが、周りの目がとても痛いのである。あれ? それって痛いってことなのでは……。
 まあ、こいつが聞かない時は人の話を全然聞かないのは今に始まったことではないし、気にしてもしょうがないだろう。今日は入学式だけで、クラス分けなんかの他行事もないらしい。このまま直帰して昼食でも作るかなと考え、もう一度伸びをして出口に向かおうとして――

「あの……」

 小さな声で呼び止められた。声の主に当たりをつけて振りかえると、やはりと言うべきかそこにいたのはさっきまで壇上にいた丸眼鏡の人だった。分厚い眼鏡のせいもあってか、その表情からはあまり感情を読み取れない。

「今朝はありがとうございました。新入生だったんですね」

「あ、どどどうも……」

 いや、そもそもあまり感情の起伏がない人なのかもしれない。平坦な声で丁寧にお辞儀をしてくる彼女に、俺は首を振って気にしないで下さいと返した。実際特別なことはしてない。たまたま目についたから手伝っただけだし、そもそも今朝の段階で礼は言われているのだから今更というものだ。その前に俺はどもるのを何とかしようか……どうすればいいのかわからないけれど。

「というか、よく俺に気付きましたね」

 むしろ俺としてはそっちの方が気になった。俺が新入生だったなんて知らなかったようだし、知っていたとしても数百人の新入生の中から俺を見つけることはウォーリーをさがせの数倍は難しいに違いない。高校デビューと称して髪を染めたり、制服を多少着崩すような奴ならまだしも、俺は特に何も弄っていないごく普通の男子だ。この会場の中ではすぐに埋もれてしまうはずだが……。

「え、だって……」

 しかし、俺の言葉に彼女は不思議そうにコテンと首を傾げ、視線をずらした。俺の顔から外れた視線は右下に伸びていき――

「そんな目立つ子と一緒にいたら分かりますよ。……妹さんですか?」

 俺に寄りかかっていたユキを、間違いなくユキ個人をとらえた。

「「え……」」

「お兄さんと仲がいいのはいいことですが、式の最中に新入生の中に混じるのは……あまり感心できません……」

 おかげで見つけることができましたが、と続ける彼女を呆然と見つめる。ユキも困惑しているようで、俺の隣で俺と眼鏡さんを交互に見ながら、「え? え?」と小さな声を上げていた。

「どうか、しましたか……?」

 俺達の様子がおかしいことに疑問を持ったのか、眼鏡さんは問いかけてきた。俺達とてこんな状況は初めてな上に想定外の事態で、どう答えればいいのか分からない。はぐらかす方がいいのかも知れなかったが、混乱した頭ではそんなこと思いつくこともできず……。

「あの……見えてるんですか?」

「ん……?」

 つい口をついて出た言葉の意味を理解できていないようで、もう一度小首をかしげながらも彼女は――雪のように白く長い髪を湛えた、“俺にしか見えていないはずの”ユキを、確かに見ていた。

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 どうも、今回はとりあえずプロローグまでです。
 オリジナルは久しぶりに書くので、のんびりペースになると思いますが、楽しんでもらえれば幸いです。
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メンバー作品紹介

オリジナル小説サークルなのに最初の記事が二次創作の紹介なんて(白目

どうも、暁英琉です。
毎週月曜日あたりに、先週投稿されたメンバーの二次創作SSの紹介記事を投稿しようと思っています。
というわけで、今回は11/30~12/6投稿のSSになります。

   ↓   ↓   ↓

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つまり材木座義輝は腐れ縁である:山峰峻
八幡が小説家になった話の2話目です。
ここのガハマさんはなかなか新しい方向性なので、1話もお勧めです。八結というほどではないですが、ビジネスライクな二人と、ほのぼの奉仕部の頃のような二人の関係性のギャップでほっこりしますね。


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新人詐欺しているさくたろさんの新・大学八色シリーズ2話目です。
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前回の大学八色とは違い、八幡がなかなかのダメ人間になっていて、一色が完全に通い妻状態……!


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いつもぺろぺろしているあきさんのぺろぺろとはちょっと違うお話。
本人曰く、若干タイトル詐欺っぽいのでいちゃラブ至上主義の方々は注意した方がいいかも?


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一色抱き枕が公開された衝動でさくたろさんが書いたSS
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